本研究の背景と目的
日本人若年女性は、先進国では極めて稀な「やせ」体型が多いと近年報告され問題視されているが、そこに潜む健康状態「やせているけど、実はメタボ?」に関して、本研究者は2016年実施の基盤B研究(隠れ肥満プロジェクトⅠ)で一般の地域に生活する健康な女性に隠れ肥満者が存在することを明らかにし、その特徴として全般的な筋力量が低いことを指摘した。
次に2019年からは基盤B研究(隠れ肥満プロジェクトⅡ)で同じ対象者に同測定をし、両年を比較、その推移からリスク群を特定し、特に筋肉量との関連性を見ることに焦点をあてて、高齢女性の健康課題であるロコモティブシンドロームにつながると考えられるサルコペニアとの関係性を探索した。この研究の結果、両年ともに隠れ肥満者・標準から隠れ肥満者に移行する者は存在したが、隠れ肥満から肥満に移行する者は皆無であった。また、隠れ肥満者は下肢の筋肉量が低く、LDLコレステロールが有意に高く、脂質異常症との関連性が疑われた。しかしながら、具体的なサルコペニアを引き起こす生活習慣と隠れ肥満との関連性は見いだすには至らなかった。
なお、本研究における「若年女性」とは、40歳未満と定義する。その理由としては、40歳以降は特定健診の対象となり、「メタボリックシンドローム」着目した健康診査が実施されるが、それ以前の年代であり健診による把握の機会が少ない。さらに、血液検査などに異常が出づらい年代であるが、これまでの研究により隠れ肥満の該当率は約30%存在するためである。
そこで、本研究においては、2016年から2021年まで実施している基盤B研究(隠れ肥満プロジェクトⅠ・Ⅱ)から得られたデータを有する同一集団の被験者に対して、更なる縦断追跡調査を行い、その推移から潜在的な若年女性の隠れ肥満悪化群を抽出し、「隠れ肥満」状態を形成する生活の実態(栄養・活動・休息)等を明らかにする。次に、病態や身体特性と見出した栄養や運動等の活動量、休息などの生活行動の特性との関連や心理社会的要因の影響を検討し、最後に若年女性の健康的でかつ包括的で実施可能なダイエット・エクササイズデザイン(隠れ肥満予防モデル)を提言する。
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